光熱費ゼロマンションの罠

2019年10月2日の日経新聞に、こんな記事が出た。

日経新聞 

それを受けたと思われるあるブロガーさんの記事

これまで省エネ住宅は戸建ての話、と思われていましたが、マンションでも屋上に太陽光パネルを付けたり、壁やガラスの断熱化を進めることで、創エネ・省エネを進め年間の光熱費を万円単位で節約できるZEHマンションというのを売り物にして販売をテコ入れしようという不動産デベロッパーの話です。

ただ、これってある種、ハイグレード分譲マンションと同じだと思うんです。建築費はかかるし、維持費もかかるでしょ。維持費って、光熱費のことじゃないですよ。ちょっと壊れたりしたときの修理費であり、いよいよ取り換えなきゃとなった時の撤去、更新費のことです。こういうお金は、機材がが増えるほど金額も上がるのです。しかも太陽光パネルは個人所有って事みたいですね。そうなってくると共用施設である屋上を管理組合から借りるから、バルコニー使用料みたいにおカネもとられるんじゃないかな…。私の考えをまとめると、

  • 導入時の補助金があるために割りが合うように見える(が、太陽光発電買取制度のように、今後制度は変わりうる)
  • 太陽光発電は気象の影響を受けやすい上、電力を自給・購入のいずれかが得なのかは国際的なエネルギー需給などの変動要因が大きく10年ベースでみると誰にもわからない
  • やっぱり初期投資が大きい事に加え、それなりの設備を抱え維持管理の負担・リスクを抱えることは問題ではないか
  • 得するかもしれないけど、想定通りにはいかず損する可能性もある

位に考えるべきでは。これを売りにすると資産価値が上がる(維持できる)とか言ってるけど、それって、「豪華共用施設」を謳ってる物件と本質は変わらないんじゃないかな。

新聞記事によると、大京の試算で83㎡3人暮らしの部屋で年間光熱費を13万4千円減らせるという。一方で高層マンションになると戸数あたりの太陽光パネル設置可能面積は減るので年間効果は1戸5万円程度だという分析も載っている。

年間5万円じゃ、最初の10年はいいかもしれないけどそのうち足が出るようになると思うよ。いや、繰り返すけどこればかりは得か損かが断言できない。いわば投資みたいなものだと思う。環境保護の信念でやるならいいけど、損得の追求でエコ住宅を目指すと、後悔することもあるかもしれない。

マンションブロガーのらえもん氏の主張に異論を提示したい

1年ほど前ですが、マンションブロガーとして有名なのらえもん氏が書いた、購入のほうが幸せだよという記事を見かけました。まあそういう意見もあるのでしょうが、これこそ見解の相違、平行線という感じもします。

私としては、賃貸派代表として、異論を提示してみます。

1 賃貸はある理由でクオリティが意図的に下げられている

 賃貸物件は投資利回りのため、設備にあまりお金をかけないからだ、というのはよく言われること。 でもまあどういう家に住みたいかは人それぞれです。さすがに賃貸でも風呂の追い炊き機能とかは普通にあるわけで、カウンター式のシステムキッチンまでなきゃホントに不便なのかというと、私はそうは思いません。・

「転勤などにより空いた住戸を転用した分譲マンションの賃貸募集もありますが、普通の賃貸に比べて割高となります」

 とか書いてますけど間違ってます。おそらく、高スペックだから高く貸せるよ、という理屈に基づく論法なのでしょうけど、空論です。よく考えてみてください。転勤で空室になる部屋って、いずれ戻ることが前提なので、期限が来たら必ず出て行ってもらわなければなりません。つまり、旧来の借地借家法のルールではなく、更新がない期限付き(定期借家)で貸すので、たとえば2年で出ていかなければならないことを承知で借りることになります。そこにずっと住み続けられないため、借り手募集の競争力は落ちるので、周囲の同スペック物件より家賃は少し安めになるのが普通です(今の私が住んでいるところがそう)。

2 住宅ローンはサラリーマンの特権である

色々書いてありますが、一言で言うと、超低金利で借金して資産形成できるのが持ち家のメリット!という主張なんでしょう。確かにこれが当てはまる場合もあります。しかし当てはまらない場合もあるんです。変動金利の急騰、資産価値の予期せぬ下落で、持ち家がデメリットになるリスクも。私は五分五分だと思っています。

「資産性が高い物件を購入することにより、資産形成をすることすら可能です

これは体のいい営業トークにしか私には聞こえません。こんな物件、時期にもよるけど今後は10件に1件もないと思いますよ。いずれ首都圏ですら人口は減るんですし。

そもそも持ち家を買うことは投資だ、資産形成だという主張の急先鋒としては、のらえもん氏よりも沖有人氏が有名ですが、私はそもそも 彼の主張に疑問を持っています。投資に成功するためにはまず物件選び(どれ)が大事ですが、さらに売買(正確には買→売の順)の時期(いつ)も大事だということです。同じ物件でも時期によって値段は変わるわけですからね。うまくやれば損をせずに済む、得ができる、それは正しいけれど、経済情勢の影響も受けるし確率的な面もあります。沖氏のやり方だと引っ越しを繰り返すことが前提になるので、その点は賃貸生活と変わらないか、それ以上かも。ライフサイクルよりも損しないことを重視すれば、子どもの学校が変わるなど、家庭生活への影響もそれなりに出るかもしれません。QOLが変わることもあるかもよ?ってことですね。 マンション買い替えを繰り返す中で、地雷踏まなきゃいいけど…という綱渡りのメリットだと思います。

3 住宅ローンの破綻リスクは思ったほど高くない

これは持ち家派が賃貸より有利という話ではなくて、デメリットがないよと言ってる話ですね。

4 住宅クオリティをあげることによる生活の向上

「良質な住宅は、QOL(=生活の快適さ)を著しく向上させる」との主張。一方で、都心の賃貸から郊外の持ち家購入、なんて流れになると通勤時間が増加して平日のQOL悪化、なんて話もありますよね。

「1棟数百戸といった大規模物件なら、自宅以外にも広大な庭や多彩な共用施設、眺望を楽しめるスカイラウンジなどを利用できることもあります。新築時の物件規模で値段はさほど変わらない」という主張も間違ってはいませんが、イニシャルコストの話であって、10年後はどうですか?と言いたいです。別にいいや、って施設の維持費を払うのはどうですか?

ということで、私はまったく持ち家を支持することができないのでした。

3.11を思い起こす台風15号の停電被害

 千葉県の台風被害による停電がひどいことになっていた。首都圏民にとっては、3.11の計画停電以来の大規模停電である。しかも3.11のような短時間の計画・輪番停電ではなく、一週間以上の継続停電。悪いことに残暑の中、冷蔵庫や空調が使えないことのダメージは計り知れないものだった。ただ、停電被害と言うと、まずそっちにみんな目が行きがちだが、実はエレベーターが使えないこともマンション住民には大きな影響を与える。停電が「当たり前」ではないわが国では、みなこの点が意識の外に置かれやすい。そこは要注意だ。

 榊淳司氏などが展開するタワーマンション悲観論に私が一番賛同するのが、タワマンのいざというときの生活脆弱性の面である。停電が来たら、タワマン生活なんて拷問以外の何物でもない。私は今賃貸マンション生活だが、普段はエレベータ―に乗るものの、最悪歩いてもいいという高さには住んでいる。これは防災の観点から最低条件だと思う。そうでなければ自宅が無事なのに近隣の小学校体育館で避難所生活を余儀なくされる。

 しかしそれは行政は想定しているだろうか?武蔵小杉や東京ベイエリアのタワマン街でタワマン住民が「自宅は無事だが上がれない」という理由で一斉に避難所に押しかけてきたら、間違いなくパンクする。そもそも地元町内会に入っていないくせに、と揉めることも必至だろう(ご存じない方も多いだろうが、あの手の避難所は行政は運営支援はするが、実際の運営は町内会が行っている)。下手をすると拒絶されるのではないだろうか?

 また、3.11のとき、東北の津波・原発被害があまりに深刻だったためスルーされてしまったのが、やはり千葉県浦安市の液状化被害。各分譲物件がどの程度持ち出しで補修したのかは定かではないが、もうこんなところに住みたくないと思ったときの資産価値低迷リスクを考えると(風評被害を含めて)ぞっとする。

 ちなみに、武蔵小杉のタワマンに住んでいる人からあとから聞いたが、タワマン特有の薄壁のせいなのか、壁に損傷がありマンション全体で補修をしたそうだ。個人的に聞いた話だが、資産価値減少を恐れて公にはしていないっぽい。クロスの張替も当然あったので、住みながらのリフォームということで、生活面でも影響が大きかったらしい。

 こうしてみると、地震国・風水害国日本で、災害で毀損しうる高額財産を持つなんて、リスクが高すぎるのだ。家賃なんて保険料と割り切れば、安いものではないだろうか。

想定外の災害損失

 先日の台風15号は、千葉県の被害がずっとクローズアップされているが、首都圏は各地それなりに被害を受けた。私が知っている神奈川県の某大規模物件は、敷地を取り囲む一万本近い植栽(緑)が自慢だったのだが、倒木がかなり出たという。今はとりあえず安全管理上の応急処置(伐採、抜根)だけして、最終的な処理は理事会に諮って処理業者を決めることになったのだそうだ。

 そもそも植栽としての樹木一本一本は、転売できるわけではないのでそこに資産価値(の損失)を見出すかどうかはともかく、伐採、抜根、整地、場合によっては植え替えまでするとなれば、作業規模にもよるが (高所作業が必要になると高額) 数百万円の想定外支出となる。

 もちろん、いきなり管理費や修繕積立金を値上げせねば、ほどの影響はないだろう。しかし1戸当たり数千円レベルの予期せぬ負担が発生していることはまちがいない。要は少しずつ、災害復旧のために予定外に貯金が食いつぶされているということなのだ。 その結果、当初の長期修繕計画に狂いが生じてくる可能性がないとはいえない。

 そんなことが、10年に1回ぐらい起きるかもしれないのが持ち家だということは忘れないほうがいい。

ざっくり計算の実例

 世の中には、絶対持ち家派ということではなく、賃貸を勧める優れた啓発記事もある。

https://president.jp/articles/-/23760

 だが、この記事の中での持ち家賃貸支出額比較でも、やはり持ち家の支出計算は荒っぽすぎる。持ち家に30年住んで、既定の管理費・修繕積立費以外に持ち出しのお金が発生しないとでも思っているのだろうか。修繕積立費は、あくまでマンション共用部分の修繕費の積み立てである。専有部分を30年使って、修繕がゼロで済むことはまれだ。一番大きいのはガス給湯設備。一般的に寿命(交換推奨時期)は10年程度とされるので、30年なら2度は変えるべきだろう(1回当たり安くても40万程度はかかる)。また今は家庭でも付けるのが当然となったシャワートイレも同様(こっちは1回10万円はしないだろう)。

 このほか、賃貸マンションならついている(設置・維持費用は家主負担)エアコンも省エネ性能面で10~15年程度で交換するのが普通。そう考えていくと、持ち家では、賃貸物件ではかからない維持費が10年で100万円くらい平気でかかってしまうのだ。

 しかし、ほとんどの持ち家・賃貸比較では、持ち家コストとしてこの点が組み込まれていない。その理由はなぜかと考えたとき、まず思いつくのは、「はっきりしないから組み込めない」ということに尽きる。家賃や更新料の発生は、値上げがない限りだいたい想定できるが、修繕はいつ発生するかわからないからだ。でもだからといって数字を見込まないのは行き過ぎている。保守的な予想で、災害などによる専有部分の損傷を含め、持ち家では、共用部分の修繕積立金負担のほかに、専有部分の維持費として年10万円くらいの支出は見込んでおくべきなのである。

持ち家派・賃貸派の損得計算の愚かさ

 マンション販売の営業トークに、持ち家のほうが得ですよ(家賃は消えるだけだけど、ローンは資産になり残る)というのがある。それ自体は正しいけど、そこだけ見て損得を考えちゃうのは、難しいことを考えたくない思考停止以外の何物でもない。まあ、販売業者にしてみれば、余計なことを考えさせたくないだけなんだよね。

 本来、持ち家と賃貸のどちらが得かを本当に考えるなら、両者のお金の出入りを正確に計算して勝敗を決めるべきなのだけど、ほとんどの場合、繰り返しになるが家賃は戻ってこない、でもローンは資産になって後で金に換えられるみたいな比較しかしない。持ち家には税金や管理費など「隠れ家賃」があることも考えていない。

 もちろん、そこまで考えたとしても、いちおう持ち家のほうが得だ、という計算は確かに成り立ちはする。しかしそこには実は大きなカラクリがある。すべてのことが計算通りに行けばね、ということだ。そして、その計算とは何かっていうと、簡単に言うとさまざまな将来(自分の未来の人生や社会経済状況)予測のことだ。つまり、すべてのことが計算(予想)通り(しかもかなり楽観的)にうまくいったとすれば確かに、持ち家のほうが得しますよ、てことなんだな。

 でもさ、物理学や経済学なんかでもそうだけど、実際の運動や経済の動きが理論的な計算通りに行くことなんてない。不動産の損得だって同じで、その計算(アテ)が外れれば、持ち家がお得ですのそろばん勘定なんて砕け散ってしまうんだけど、そう考える人は少ない。

 このサイトでは、賃貸って必ずしも損じゃないよ、ってことを、様々な観点からいろいろ説明していくわけだが、まずはじめにとりあえず持ち家vs.賃貸の損得を考える上での計算要素(リスク要因)を簡単に挙げてみることにする。今後の記事では、それら一つひとつを分析していくことにしたい。

  • ①災害(持ち家毀損)リスク
  • ②新築時施工不良(中古物件なら瑕疵)リスク
  • ③資産価値低迷(高値掴み)リスク
  • ④資産価値低迷(心理的瑕疵)リスク
  • ⑤資産価値低下(経年起因)リスク
  • ⑥居住コスト増加(経年起因)リスク
  • ⑦家族・周辺付き合いリスク  

新築マンション高騰、中古取引活況と言われるが

 私はバブル期は学生で、社会人がパーティーや投資に狂喜乱舞するのを横目に見た世代だが、あの当時、不動産価格が跳ね上がり、庶民は一生家を買えないだとか、あるいはいったん郊外に家を買うが高値で転売した原資で23区に戻ってくるぞみたいに息巻く話はよく聞いた。

 しかし実際は、郊外に物件を買ったあとバブルが崩壊し都心に戻ってくることができなくなり過酷な通勤を余儀なくされた(若しくは郊外の物件を処分するために少なくない損切をせざるを得なくなった)人を多数生み出した。

 バブル崩壊により、日本が長期経済低迷に陥り、不動産価格が暴落後、もうあんなに不動産価格が高騰するなどとは誰も思わなかったはずなのに、いつのまにか都心の不動産価格は上がっていた。リーマンショックで一回冷や水を浴びせられたが、いまや都心のマンション(特にタワーマンション)価格はバブル期を上回っている。

 どう考えても新バブルである。その結果、新築マンションに手の出なくなった住宅需要層が良質の中古マンションを物色し始めた、とはここ近年よく言われるところである。だが、自分の感覚でいうと、中古マンション市場の活況も、オリンピックまであと1年残しながらそろそろ曲がり角というかピークアウトし始めているように思う。

  そう考える理由は、私がいま住んでいる家のポストに入る、近隣の分譲マンションの売り出しチラシにある。近所にはタワー、板状の大規模マンションがいくつかあるのだが、チラシコレクターをやってみると、同じ物件のチラシが1カ月おきに何度も配られるようになっているのだ。つまり、売れていないわけである。長引くと、当然、価格変更(値下げ)もしてくる。しかし売れないのだ。

 半年ほど前だとこんなことはなかった。もちろん、当初の価格設定が強気すぎるという面もあるだろうが、オリンピックを前に中古取引価格の上昇傾向にも陰りが見えてきたのではないだろうか。