持ち家派・賃貸派の損得計算の愚かさ

 マンション販売の営業トークに、持ち家のほうが得ですよ(家賃は消えるだけだけど、ローンは資産になり残る)というのがある。それ自体は正しいけど、そこだけ見て損得を考えちゃうのは、難しいことを考えたくない思考停止以外の何物でもない。まあ、販売業者にしてみれば、余計なことを考えさせたくないだけなんだよね。

 本来、持ち家と賃貸のどちらが得かを本当に考えるなら、両者のお金の出入りを正確に計算して勝敗を決めるべきなのだけど、ほとんどの場合、繰り返しになるが家賃は戻ってこない、でもローンは資産になって後で金に換えられるみたいな比較しかしない。持ち家には税金や管理費など「隠れ家賃」があることも考えていない。

 もちろん、そこまで考えたとしても、いちおう持ち家のほうが得だ、という計算は確かに成り立ちはする。しかしそこには実は大きなカラクリがある。すべてのことが計算通りに行けばね、ということだ。そして、その計算とは何かっていうと、簡単に言うとさまざまな将来(自分の未来の人生や社会経済状況)予測のことだ。つまり、すべてのことが計算(予想)通り(しかもかなり楽観的)にうまくいったとすれば確かに、持ち家のほうが得しますよ、てことなんだな。

 でもさ、物理学や経済学なんかでもそうだけど、実際の運動や経済の動きが理論的な計算通りに行くことなんてない。不動産の損得だって同じで、その計算(アテ)が外れれば、持ち家がお得ですのそろばん勘定なんて砕け散ってしまうんだけど、そう考える人は少ない。

 このサイトでは、賃貸って必ずしも損じゃないよ、ってことを、様々な観点からいろいろ説明していくわけだが、まずはじめにとりあえず持ち家vs.賃貸の損得を考える上での計算要素(リスク要因)を簡単に挙げてみることにする。今後の記事では、それら一つひとつを分析していくことにしたい。

  • ①災害(持ち家毀損)リスク
  • ②新築時施工不良(中古物件なら瑕疵)リスク
  • ③資産価値低迷(高値掴み)リスク
  • ④資産価値低迷(心理的瑕疵)リスク
  • ⑤資産価値低下(経年起因)リスク
  • ⑥居住コスト増加(経年起因)リスク
  • ⑦家族・周辺付き合いリスク  

新築マンション高騰、中古取引活況と言われるが

 私はバブル期は学生で、社会人がパーティーや投資に狂喜乱舞するのを横目に見た世代だが、あの当時、不動産価格が跳ね上がり、庶民は一生家を買えないだとか、あるいはいったん郊外に家を買うが高値で転売した原資で23区に戻ってくるぞみたいに息巻く話はよく聞いた。

 しかし実際は、郊外に物件を買ったあとバブルが崩壊し都心に戻ってくることができなくなり過酷な通勤を余儀なくされた(若しくは郊外の物件を処分するために少なくない損切をせざるを得なくなった)人を多数生み出した。

 バブル崩壊により、日本が長期経済低迷に陥り、不動産価格が暴落後、もうあんなに不動産価格が高騰するなどとは誰も思わなかったはずなのに、いつのまにか都心の不動産価格は上がっていた。リーマンショックで一回冷や水を浴びせられたが、いまや都心のマンション(特にタワーマンション)価格はバブル期を上回っている。

 どう考えても新バブルである。その結果、新築マンションに手の出なくなった住宅需要層が良質の中古マンションを物色し始めた、とはここ近年よく言われるところである。だが、自分の感覚でいうと、中古マンション市場の活況も、オリンピックまであと1年残しながらそろそろ曲がり角というかピークアウトし始めているように思う。

  そう考える理由は、私がいま住んでいる家のポストに入る、近隣の分譲マンションの売り出しチラシにある。近所にはタワー、板状の大規模マンションがいくつかあるのだが、チラシコレクターをやってみると、同じ物件のチラシが1カ月おきに何度も配られるようになっているのだ。つまり、売れていないわけである。長引くと、当然、価格変更(値下げ)もしてくる。しかし売れないのだ。

 半年ほど前だとこんなことはなかった。もちろん、当初の価格設定が強気すぎるという面もあるだろうが、オリンピックを前に中古取引価格の上昇傾向にも陰りが見えてきたのではないだろうか。