「区分所有者たちの掟」は不動産やは教えてくれない

私もしょっちゅう寄稿している現代ビジネスで、こんな記事を見た。

管理規約に違反して、分譲マンションのルーフバルコニーにサンルームを作っちゃったというトンデモ住人の事例。なぜこんなことが起きるかというと、認識不足というか自覚のなさが原因と言わざるを得ないのではないか。

そもそも分譲マンションを買う場合、買主は、物件そのもののスペックについては、宅建業法に基づき不動産業者から事細かに重要事項説明を受ける。しかし、区分所有とは何たるか、つまり区分所有者としての権利と義務については、まともな説明は受けない。そして、 そのまま管理組合員になってしまう。コミュニティ…運命共同体の一員となる自覚もなしに。

まさに、それがダメなんじゃないかと思う。この記事の事例でも、問題の人物は「なんでサンルーム作っちゃいけないんですか?」って感覚を持っている。これは、マンションは最終的にはみんなの建物だよ、自由に使える範囲には限度があって、自分勝手はダメだよ、ってことの、自覚がなさすぎるんだよね。

そういう、昔なら阿吽の呼吸でわかってたようなこと、いわば「公教育」的な部分を、重要事項説明として「教育」する義務を、宅建業法か建築基準法か区分所有法のいずれかに入れるべきじゃないかと思うねえ。

光熱費ゼロマンションの罠

2019年10月2日の日経新聞に、こんな記事が出た。

日経新聞 

それを受けたと思われるあるブロガーさんの記事

これまで省エネ住宅は戸建ての話、と思われていましたが、マンションでも屋上に太陽光パネルを付けたり、壁やガラスの断熱化を進めることで、創エネ・省エネを進め年間の光熱費を万円単位で節約できるZEHマンションというのを売り物にして販売をテコ入れしようという不動産デベロッパーの話です。

ただ、これってある種、ハイグレード分譲マンションと同じだと思うんです。建築費はかかるし、維持費もかかるでしょ。維持費って、光熱費のことじゃないですよ。ちょっと壊れたりしたときの修理費であり、いよいよ取り換えなきゃとなった時の撤去、更新費のことです。こういうお金は、機材がが増えるほど金額も上がるのです。しかも太陽光パネルは個人所有って事みたいですね。そうなってくると共用施設である屋上を管理組合から借りるから、バルコニー使用料みたいにおカネもとられるんじゃないかな…。私の考えをまとめると、

  • 導入時の補助金があるために割りが合うように見える(が、太陽光発電買取制度のように、今後制度は変わりうる)
  • 太陽光発電は気象の影響を受けやすい上、電力を自給・購入のいずれかが得なのかは国際的なエネルギー需給などの変動要因が大きく10年ベースでみると誰にもわからない
  • やっぱり初期投資が大きい事に加え、それなりの設備を抱え維持管理の負担・リスクを抱えることは問題ではないか
  • 得するかもしれないけど、想定通りにはいかず損する可能性もある

位に考えるべきでは。これを売りにすると資産価値が上がる(維持できる)とか言ってるけど、それって、「豪華共用施設」を謳ってる物件と本質は変わらないんじゃないかな。

新聞記事によると、大京の試算で83㎡3人暮らしの部屋で年間光熱費を13万4千円減らせるという。一方で高層マンションになると戸数あたりの太陽光パネル設置可能面積は減るので年間効果は1戸5万円程度だという分析も載っている。

年間5万円じゃ、最初の10年はいいかもしれないけどそのうち足が出るようになると思うよ。いや、繰り返すけどこればかりは得か損かが断言できない。いわば投資みたいなものだと思う。環境保護の信念でやるならいいけど、損得の追求でエコ住宅を目指すと、後悔することもあるかもしれない。